百獣の王
自分は動物園がちょっと苦手だ。苦手と言ってしまうと、
少し意味合いが違うのかも知れないが、動物園には複雑な思いが・・・。
好奇心が服を着ているような僕は、普段身近に見れない動物達を
まじかで見られるのはとても嬉しいし楽しい。
しかし・・・・・
同時に楽しさとは別な感情が込み上げてくる、その思いとは
「かわいそう」誤解しないでください、なにも檻に入れられてるからって事で、
可哀そうと思う訳ではありません。むしろ動物達にとっては
食べる物にも困らず、病気になっても獣医さんに診てもらえ、
外敵の恐怖に晒される心配もなく平和に暮らして行ける・・・。
ただ、その代わり、自由が無い。
「ほら、やっぱり檻に入れられてる事でしょ」
そう思われるかもしれませんが、ここで僕が言う自由が無いと言うのは
死ぬ自由すら無い・・・
勘違いしないでください、なにも自殺できないって事ではありません。
ちなみに自殺する生き物は人間だけらしいです。
生き物は本能で少しでも生き長らえようとします、
「死ぬ自由」と言うのは直接死ぬことではなく、自分の運や強さが関係する死です。
どんな動物にも本能があり、その本能の命ずるままに生きて行きます、
しかし、その本能を抑制されたら・・・。
百獣の王ライオン、そのライオンの持つ爪と牙・・・。
動物園のライオンは自分の持っている力すら使えず、
そして本当の自分すら知らないままその生涯を終える。
獲物を追う、自慢の爪と牙で獲物を仕留める、
そのライオンは腹がふくれるだけでなく「獲物を仕留めた」という思いで、
胸の中にも充実感が広がっていく。
確かに運悪く獲物を仕留められなければ待っているのは死です、
僕の言う「死」とはこう言うことです、なにも肉食動物だけではありません、
水や食料を求めて大陸を横断する草食動物達、子供達を連れて・・・。
自分の判断が誤れば、それこそ群れごと餓死は免れない、
それでも自分の本能、野生の勘、DNAに従って大陸を横断する・・・、
誰にも頼る事無く自分の能力を信じて。
自分の力、能力を使えず、また使い方すら忘れ、本当の自分を知らぬまま死ぬ・・・。
可哀そう・・・。
百獣の王は自分の勘で獲物を探し、
大地を蹴って獲物を追い、与えられたその爪と牙で獲物に喰らい付く、
追われる方も命懸けで抵抗する、どちらも自分の持っている力を全力で使う、
今日を生き抜く為に・・・。
もし、自分が死んで、ライオンに生まれ変わったなら、
例え常に死と隣り合わせでもサバンナで生きて行きたい。
そして運悪く死んでも本当の自分のまま死んでいきたい。